編集者が真実を語る「光を当てた理由」[The yogis magazine]Vol.9_P068【チャールズ・チャップリン】

毎号掲載「Are you yogis?」ってどんなページ

[The yogis magazine]の中にある連載企画「Are you yogis?」は、直訳通り「あなたはヨギスですか?」という記事。そもそも本のタイトルにもなっている“ヨギス”とは、ヨガをする人達すべてを指す言葉。なので本誌で「Are you yogis?」と言えば、あなたはヨガをする人ですか? とシンプルに聞いていることに。ここに登場する著名人は、別に、いわゆるヨガをやっていた人ではないけど、生き様に、ヨガ的な考え方や行動があると、“編集部が思っている”人です。

今回フィーチャーしたのはあの「チャップリン」

Vol.9で紹介したのは、20世紀を代表する喜劇王、チャールズ・チャップリン。監督、脚本、主演を務め、すべての映画を世界中で大ヒットさせた彼は、活動の拠点としていたハリウッドから一度追放されますが、晩年には誤解が解けてハリウッド映画界で殿堂入りし、出身国のイギリスからは「サー」の称号をもらい、88歳の生涯を終えています。

優しく、ユーモアな印象を大切にしたスタイル

チャップリンと言えば、誰もがイメージするチョビ髭、小さな山高帽、ぶかぶかのズボンにタイトで短いジャケット、大きめの靴、ステッキというスタイルを生み出します。それにより大人気になり、彼が監督、脚本、主演でつくる短編はすべて大ヒット。長編へ切り替えてからも映画は歓迎され、時代を作っていったのです。

このチャップリンのスタイルは、「The Tramp」と呼ばれ、意味は他に「放浪者」、「あてもなく歩く人」。不安定な暮らしでありながら、常に紳士的でユーモラス、平和的でロマンチック、貧しくも気高い、不器用だけど優しいというキャラクター性の体現でした。

彼の持ち物はステッキと山高帽、サイズの合わない服や靴。形にとらわれず、必要以上のものを持たない。ステッキは優しさやジェントルをわかりやすく象徴している小道具です。映画の中の彼はいつも利他的であり、間違ったことをユーモラスに正し、弱い者に寄り添っています。

…と並べてみると、The Trampというアイコン的なスタイルは、ヨガでいうアーサナ(ポーズ)と同じ価値観じゃないかなと思うんです。外に見えるものが内側の表現をしっかりしている。実は、これ、今号の特集と同じコンセプトでもあるんですよね。

長編映画『独裁者』という挑戦

の代表作である長編映画『独裁者』は、1940年、第二次世界大戦中に公開されました。この映画は企画段階から、世界中が神経をとがらせていました。それは、ドイツのヒットラーやイタリアのムッソリーニなど、実在した独裁者を彷彿とさせるものだったからです。

だから、チャップリンはヒットラーサイドからはとても邪魔な存在。そこでドイツはもとより、アメリカやイギリスなど、彼の地元と思われる国からも妨害工作が入るなど、大変な状況だったようです。

それでもチャップリンはこの映画を作り上げ(そこには何度も推敲を重ねた脚本があり、撮り直しもありました)、世界に公開しました。そして、公開にこぎ着けると、戦局も変わっていたことから、今度はアメリカやイギリスで大絶賛されたのです。

結果的に『独裁者』が受け入れられたのは、チャップリンは欲や名誉のためにこの映画を作ったからではなく、「平和と平等」というコンセプトを世界に取り戻してほしいという一心を貫いたからだったのではないでしょうか。それは、結果にこだわらず「今ココ」でできるすべてのことを集中して行う、というカルマヨガにも通じる生き方と言えるンじゃないかと思います。

平和と平等

この映画を初めて観た時、筆者は20代に入ったばかりだったと思います。当時の方が今よりずっと平和だったけど、チャップリンが映画を作った当時と今は、何だか時代背景が似てきていて、とても居心地が悪い。だからチャップリンが自分の意見をしっかりと貫いて、平和を訴えているのはスゴいことだと思います。

しかも、彼の“武器”は笑い。人々の笑顔です。風刺を利かせつつも、人を傷つけずに、弱い者に手を差し伸べる。『独裁者』の最後に流れる6分間の演説は、今聴いても心にガツガツと食い込んできます。平和に対する思い、人々の本質的な安心とは、愛とは。この6分間に全部あるような気がします。

本誌では、この演説をヨガ的な思いを込めて翻訳し、全文載せています。ヨガをする私達だからこそ伝わる思いもあると思います。ぜひ、目を通して見てほしいと思います。

それから、やっぱり『独裁者』観て下さい! 何百の解説本より、彼の一作がすべてを物語っています。そこから、私達が得る思いが真実なのだと思います。(編集部:大嶋朋子)

 

 

【The yogis magazine「Are you yogis?」でこれまで紹介してきた人】

この人の生き方はヨガではないか…と編集部が考え、その生き様からヨガ的な部分を探して紹介する連載企画「Are you yogis?」で取り上げてきた人達です。

Vol.1:岡本太郎

どんなものとも真剣にぶつかり合い、調和を求め続けた。まさに崇高なヨギの生き方では?

Vol.2:アルベルト・アインシュタイン

一般相対性理論を説いたアインシュタインは徹底した平和主義者だった。彼が求めた真の平和とは?

Vol.3:白洲次郎

第二次大戦後のGHQと対等に渡り合い、日本の誇りを守り続けた。彼を貫いていたのはプリンシプル=原則という考え方。

Vol.4:マザー・テレサ

インドで「貧しい人」のために奉仕したマザー・テレサ。彼女のキリスト教に根づいている活動を、ヨガ的に読み解く。

Vol.5:モハメド・アリ

ベトナム戦争の徴兵を断り、自分の意志を貫いた男が20世紀に残した足跡。

*Vol.6は休載。

Vol.7:マハトマ・ガンディー

「非暴力」を訴え、インドの独立を勝ち取った信念の人。インド哲学の教えが彼の“武器”だった。

Vol.8:杉原千畝

第二次世界大戦下、ユダヤ人へのビザ発給によって6000人の命を救った。その信念は「すべての命は平等だ」という思いだった。

 

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