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瞑想する時、心と体に起こっていること

瞑想というと、なんとなく漠然と「集中力が上がりそう」、「リラックスが深まりそう」などイメージがあるかもしれない。

実際に、体や脳ではどんな変化が起きているのだろうか? 今回は、科学的視点から瞑想を解説し、さらに気になる瞑想にまつわる疑問を解決していく。

客観的に理解することで、瞑想に取り組みやすくなるかも⁉︎

 

 

眠っていないけれど覚醒もしていない状態

 

「毎日、目を閉じて座っているけど、これって瞑想になってるのかな?」、「どういう状態になったら瞑想って言えるの?」こんな疑問を、抱いたことはないだろうか。ポーズと違って見た目で脳内の状態がわかるわけでもないから、誰かに見てもらって判断してもらうことも難しい。

ヨガで言う瞑想状態に入っている時は半覚醒の状態で、脳は眠りと覚醒の間のグレーゾーンにいる。眠ってはいないので意識はあるのだけれど、意識があるという自覚もない。完全に我を手放している状態とも言える。

では、我を手放しているその時、肉体はどうなっているのか。瞑想状態に入ったヨガ行者は、1分間に2呼吸ぐらいしかしない。通常は1分に12〜20回なので、それぐらい呼吸がゆったりとしているということだ。

つまり体のどこにも無理がなく、最低限のエネルギーだけ使って座っているような状態だ。逆に言えば、寒かったり脚がしびれたりと肉体が不快な状態にある時は、瞑想状態へ入るのが難しい。

無理なく座れると呼吸が整い、集中しやすくなって瞑想へ入りやすくなる。外側の体を整えて初めて内側が静かになり、瞑想で脳がリセットされる。

 

医学的に見てパドマーサナの意味は?

 

医学的に言えば、力が抜けて背骨が丸まっていると、とても呼吸がしづらい。安定した快適な呼吸をするためには、背骨をまっすぐに引き上げることが大切だ。その意味で、骨盤を立て、背筋を伸ばして座ることができるパドマーサナは、とても理に叶った姿勢と言える。

背骨がまっすぐに伸びて、心地よい呼吸が維持されていれば、瞑想中に眠りに落ちることもない。骨盤が立っているため、骨盤内に集中している自律神経も正しく働き、副交感神経が優位になって自然と落ち着いてくる。

しかし、パドマーサナで長い時間座っているためには、股関節が十分開いていること、重力に抗って体を支える抗重力筋がしっかり使え、深い呼吸ができることが必要。ヨガのアーサナ(坐法)は、この三つを鍛えるための練習でもある。

パドマーサナを無理に行うと痛みが出て瞑想を妨げるので、慣れるまでは座禅布団やヨガブロックを使い、心地よく座れる環境を整えて。

 

 

静かに座っている時に雑念が起こるのは当たり前⁉︎

 

信号が赤になって、車が交差点で停止している時も、エンジンだけは回転し続けている。同じように、私達が仕事や勉強から離れて静かにボーッとしている時間も、脳はひそかに動き続けている。これが“雑念モード”とも呼ばれる脳の“デフォルトモード”の状態。

実はこの時の脳は、何かの活動をしている時よりもさらに活発に働いている。しかも意図していないのに勝手に動き出してしまう。だから私達が目を閉じ、何も考えないように静かに座っていると、いつの間にか、この“デフォルトモードネットワーク”のスイッチが入り、次から次へと雑念が湧いてきてしまうのだ。

放っておくと、あっちに行ったりこっちに行ったりしてしまう。その動きを強制的に落ち着かせよう、というのが瞑想。そのための手段として生まれてきたのが、マントラなどのさまざまな瞑想法なのだ。

 

 

五感が瞑想をジャマする理由

 

私達の五感は常に働いている。だからこそ危険を察知して身を守ったりすることができるが、瞑想の時にはその五感が邪魔になる。

例えば、五感が働いていると、カレーのにおいに反応してカレーが食べたくなるし、ガラスを爪でこするような「キーッ」と高い音が聞こえてきたら、鳥肌が立つような不快感に襲われる。

つまり、五感が普通に働いていると意識がそちらへ向いてしまうため、瞑想することは難しいのだ。

そこで必要になるのが、八支則の5段階目にあるプラティヤーハーラ(感覚制御)。安定した呼吸ができている時に、その呼吸やマントラなど何か一つの対象に集中していくと、他の感覚へと拡散しがちな意識が、次第に一つに統合されていく。それが、感覚制御。

この時、プラーナーヤーマ(調気法)、プラティヤーハーラ(感覚制御)、ダーラナ(集中)の三つは完全に一体になっている。三つはそれぞれ表裏一体の関係なのだ。

 

 

文=Yogini編集部