【ヨガはいつも不思議】知っているようで知らなかった「チャクラ」

チャクラとの遭遇

ヨガの取材を続けていると、ときどき面白いことがある。知っているつもりだった言葉が、ある日突然、まったく別の輪郭で迫ってくることだ。

今号で担当したチャクラ特集が、まさにそうだった。

ヨガを長く続けていても、チャクラにはどこかつかみどころのない響きがある。目に見えないし、体の話をしていたはずなのに、気づけば宇宙とか覚醒とかの話になっていて、少し神秘的すぎる(そして、たぶん多くの誤解も)。知っているようで、よく知らない。どこか遠い概念。そんな印象があった。

実は、これまでに何度か「チャクラらしきもの」を体験したことはある。ひとつは、たまたま参加したヨガクラスが「チャクラに沿ったポーズ」がテーマだったとき。ゆっくりした座位中心のクラスを終えた後、これまでに感じたことのない爽快感と高揚感が噴出した。「もしかして、チャクラひらいた?!」感はいまだに忘れられない。

もうひとつは、スリランカで滞在したアーユルヴェーダ施設でのこと。チャクラを診断し整える特別プログラムがあり、なぜかその場で通訳を手伝うことになった。ドクターは患者さんの七つのチャクラを順に診て、強い場所、弱い場所、その状態が生活習慣や感情とどうつながるかを読み解いていく。その後の手技も超常現象的なものではなく、むしろ気功のような、地味なメンテナンスに近かった。「チャクラって一体何?」と疑問は膨らんだ。

今回の取材を通して、その断片的な体験がひとつにつながった気がする。

チャクラは体の中を“見る”技術

誌面で紹介した記事のひとつは、Chaki先生による「マントラでチャクラにアクセスする方法」。各チャクラに手を当て、意識を向けながらマントラを唱えるシンプルな実践だ。取材日は雨模様。緑に囲まれたスタジオで、モデルのくららさんが先生のガイドに従って、ひとつひとつのチャクラに意識を向けていく。撮影は、ほとんど瞑想の記録といっていい。雨に洗い流されるように空気は清らかで、周りのあらゆるものとつながっていくようなセッション。身体や言語を超えた場所から癒されていくような安心感。ヨガの八支足にある「イーシュワラプラニダーナ(身をゆだねる・祈りの心)」が頭をよぎる。

マントラは音のメンテナンス

そこで大きく作用していたのが、マントラの存在だ。

これまで私にとってマントラは、ヨガクラスで先生が唱えてくれる心地いいBGMのような存在。内容はよく分からないけれど、なんとなくありがたい。しかし、この取材で「聖なる音」というものを別の角度から見られた気がする。

人の体は細胞でできていて、その細胞をさらに細かくたどれば、すべては振動しながら存在している。だとしたら、流れが滞っているものを整えるのに「音の波」を使うという発想は、案外まっとうなのかもしれない。エネルギーの調整を、同じエネルギーで行う。そう考えると、妙に納得してしまう。

風邪をひく。疲れが抜けない。気分が沈む。私達はつい、目に見える症状だけに意識を向ける。でも、それは氷山の一角にすぎないのかもしれない。水面下には、臓器の働きや自律神経、感情のクセや言葉にならないストレス、そして目に見えない「エネルギー」の流れがある。

チャクラは、この深い場所にある「エネルギー」から整えようとする視点だ。ヨガの言葉で、この私達を生かしているエネルギーを「プラーナ」と呼ぶ。プラーナは意識を向けたとろにより流れるため、誌面で紹介した内容を実践する際には、各チャクラに手を当て意識を向けることを大事にしてほしい。

クンダリーニヨガの意外な合理性

もうひとつ担当したクンダリーニヨガの実践ページ「チャクラとエネルギーの関係を科学するクンダリーニヨガ」。これがまた面白い。クンダリーニヨガというと神秘思想の象徴のようなイメージがあったが、実際はアメリカ生まれの、かなり合理的で、驚くほど「設計されたシステム」だった。ポーズの順番、腕の角度、呼吸の仕方、マントラまで細かく決まっていて、チャクラを通るエネルギー回路を操作するためにフルコミットしている。

「クンダリーニ」もプラーナだが、特別なのは「枯れることがないエネルギー」だということ。こんこんと湧き出る命の泉のようなイメージか。そんな素晴らしいものが、自分の体内にあったのかと思うと感動すら覚える。

取材した中山久美子先生自身、若い頃は虚弱で手術や入退院を繰り返していたそうだ。最初は教室に行くだけで疲れていたのに、続けるうちに体が変わった。クンダリーニヨガで健康を取り戻し、やがてその世界を代表する指導者のひとりにまでなった。その実体験には、「エネルギーを整える」ことのパワフルさが宿っている。

印象的だったのは、「サットクリヤ」というわずか数分の実践。短時間でエネルギーを活性化できるため、アメリカでは出勤前に車の中で行う人もいるらしい。なんとも合理的だ。

今年に入ってから、やたら風邪をひいている。少し情けない気持ちでいた筆者にとって、このタイミングでチャクラを取材したのは偶然ではない気もしている。免疫が落ちている、で終わらせず、自分の深い層にあるエネルギーの乱れを整えてみたらどうなるのだろう。そんな好奇心ごと、今号の記事に詰め込んだ。マントラやクンダリーニヨガを実践して起こった変化など、みなさんの体験もぜひ聞かせてほしい。

【プロフィール】
山本加奈
編集者・ライター・プロデューサー・茶道家。ヨガ、ウェルビーイング、映像カルチャーを中心に取材・執筆を行う。RYT200修了。国際的なクリエイティブイベントのプロデュースや茶道の実践を通じ、身体性と精神性、文化や表現の領域を探求中。

 

The yogis magazine  Vol.13
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