検索

ヨガ/ ヨーガ/YOGA① インドの叡智が生んだ人生を豊かにするツール

ヨガとは何だろう? インドで体系づけられた時から現代までハリウッドセレブ達が火つけ役となり、世界的なヨガブームに! 変わっていない本質と、新しい広がりをまとめた。

【心をコントロールするための誰もが使える万能な知恵】

ヨガとは何だろう? ヨガはすべての人がどんなシーンにも使うことができる、実に万能 な知恵だ。ヨガの言葉の語源はサンスクリット語の「ユジュ」で、「くびき(馬と馬車をつなぐ道具)」という意味。そこで、ヨガは「結ぶ・つながり」と解釈される。では、何とつながるのか? それは「ありとあらゆるもの」。人や自然や宇宙、目に見えるもの見えないもの、想像や妄想まで何でもだ。そして、 つながるための方法としてアーサナ(ポーズ) や瞑想、呼吸法などが確立されている。

それらの方法を使って行うのが「心をコントロールし、考えをクリアにする」こと。心は 今にとどまっているのが苦手で、過去や未来に飛んでは、後悔や不安、恐れなどを呼び込んでしまう。そうした感情に支配されると不幸感を招くので、そうならないためにヨガによって心をコントロールしたいのだ。

言い換えると、ヨガは幸せになるためのツール。今にとどまり、生きる活力を高めるための方法論。現代は、こうしたヨガの意味や特性が幅広く捉えられ、また、つながり力を発揮し、ヨガから得られる恩恵がさまざまな分野で目的に合わせて活用されている。そして、ヨガと出会って自分自身を取り戻し、人生がラクに、かつハッピーになっていく人がたくさん生まれているのだ。

【現代のヨガと本来のヨガは少し用途が違う!? 】

現代は、たくさんあるヨガの特性が細分化され、目的に合わせて方法が抽出され、いろいろな分野で活用されている。本来のヨガの目的と合わせて見てみよう。

□現代のヨガの目的

不調改善/健康維持/ダイエット/ フィットネス/ビューティ/能力向上/QOL向上etc

今や日々の暮らしにヨガを取り入れている人の数はうなぎ登り。ヨガがより一般的になるにつれ、男性やシニア、キッズ、アスリートなど対象者も幅広くなってきているからだ。そのために、ヨガの数ある特性を、対象者やライフシーンに合わせて使い分けるようになっている。

また、肩コリや腰痛などの不調・未病の改善、運動不足の解消、ボディシェイプ、眠っている心身の脳力を引き出すこと、セラピーとして、人生の質(QOL)を上げるためなど、ヨガはいろいろなシーンで使われるようになっている。

特に最近は、体だけでなく、メンタルへの作用に期待が高く、精神の安定や集中力、直感力などの訓練法としても用いられる。

□本来のヨガの目的

一体化/合一/自己実現/瞑想法/悟り

古代のインドでは、つながりたかった対象は「神」や「宇宙」。もうこのツラい世界に生まれ変わらなくてもいいように、あるいは、不老不死となり現世において豊かさを得るために、哲学が盛んになり、多くの考え方や方法が生まれた。

ヨガはそのうちの一つ。瞑想によって、エゴを取り除いて本来の自分に戻り、神とつながることがヨガの目的だったのだ。アーサナ(ポーズ)と言えば、現代ではさまざまな姿勢を取ることを指すが、当時はアーサナは瞑想のための坐法。安定してリラックスした坐法を保つと瞑想に入りやすくなるため、神という存在との一体化、合一をするための方法として確立されたのだ。

【本来のヨガは「私は幸せな存在」と思い出すための方法論】

実は、生きとし生けるものはすべて、そのままで幸せな存在。ただ、多くの場合、それを忘れている。ヨガはそれを思い出し、本来の幸せな存在に戻るための方法論だ。自分が幸せな存在だとわからないのは、「本来の自分」を覆うもの(自分で「私と自認する自分」) があるからだが、ヨガをすることで、覆いがあること、その覆いと自分は別物だということに気づける。それにより幸せな「本来の自分」として生きていける。

ヨガ哲学はその考え方、メソッドを体系化したもの。紀元前からあるさまざまな哲学書には、ヨガの方法論が細かく記されている。時間はかかっても丁寧に実践していくことで、必ず「本来の自分」を取り戻せる。ヨガは実践してこそ意味があり、実感できるのだ。

CHECK

ヨガとは心の働きを収めていくこと

「本来の自分」を知るには、さまざまに働き、揺れ動く心を落ち着かせる必要がある。ヨガは心の働きを収めていくツール。

【「本来の自分」は五つの鞘を超えた存在】

「本来の自分」は五つの鞘に包まれている。五つの一番外側は目に見える肉体。その内側にエネルギーや心、意思などがある。それらの鞘が生まれてからの経験や観念などで濁っていくことで、「本来 の自分」の存在が見えなくなる。この鞘の濁りを取るのがヨガ。

□プルシャと五鞘「パンチャ・コーシャ」

プルシャ…本来の自分、真我、最小かつ限り なく広がる五鞘を超えた存在

1 歓喜鞘…歓喜への移り変わりの鞘

2 理智鞘…知性と理性、判断力の鞘

3 意思鞘…感情や思考と感覚器官の鞘

4 生気鞘…生気、生理機能、行動機能の鞘

5 食物鞘…物質的な体。自然に還る体の鞘

【「ヨガとは何?」を伝えるインド発の教典】

古来、インドではヨガを伝えるための哲学書が、何冊も編まれている。成立年代も成立にかけた時間も幅広ければ、ヨガの説明の仕方も切り口もそれぞれ。後年出た解釈本なども合わせて読むことで、理解しやすくなる。

『ヨーガ・スートラ』

ラージャ・ヨーガのガイドブック。輪廻からの解脱のために行うべく段階的な修行法(メソッド)と効能、考え方、注意点などを紹介。

『ウパニシャッド 』

神への賛歌、祭事の仕方や 呪術、医学などを編纂したヴェーダ文献のうち、奥義書群。ヨガの定義や、神に近づくための方法の書。

『バガヴァッド・ギーター』

市井の人がラクな気持ちで生き、解脱するためにするべく、日常の行動様式、考え方を、ストーリー仕立てで紹介していく。

『ハタヨーガ・プラディーピカー 』

体を自在に操れるようになると、心も扱いやすくなることから、ラージャ・ヨーガに至る前に体を整えておくためのハタ・ヨガの教典。

【近代日本のヨガヒストリー】

1970-1979

日本全国で多くのヨガ組織が設立される

1980

第1回国際総合ヨガ世界大会開催

1998

アメリカ国立衛生研究所がヨガ研究に公的資金の投入を開始

2003

『Yogini』の前身となるムック本『ヨガでシンプル・ビューティ・ライフ』発売。日本で初めてヨガををライフとして捉えた雑誌が出版され、大反響!

2004

『Yogini』が枻出版社より創刊

『第1回ヨガフェスタ 』が赤坂プリンスホテルで開催

2005

東京でさまざまなヨガスタジオがオープン

2007

NHKにて、ドキュメンタリー『菅野美穂インド・ヨガ聖地の旅』放映

『アジアヨガカンファレンスア』スタート

2009

アシュタンガ・ヴィンヤサ・システムの創始者 シリー・K・パタビジョイス氏が死去

東京ミッドタウンのヨガイベント「ミッドパークヨガ」スタート

2010

ニューヨークで10万人のヨガイベント開催

日本のヨガ人口が100万人を超える

2011

スマートフォンアプリ『寝たまんまヨガ簡単瞑想』発売。ダウンロード数累計100万回超え

2013

ハーバード大学がヨガと瞑想の効果を科学的に検証する試み

2014

国連が6月21日を「国際ヨガの日」として制定

アイアンガーヨガの創始者、B.K.Sアイアンガー氏死去

日本初のヨガ映画『シャンティ・デイズ』が公開

2015

『ヨガフェスタ』がハワイでも開催

パラマハンサ・ヨガナンダのドキュメンタリー映画『覚醒』が日本でも公開

2016

現代ヨガの父と呼ばれるクリシュナマチャリア氏の軌跡をたどるドキュメンタリー映画『聖なる呼吸』が恵比寿ガーデンシネマ他で上映

2018

『Yogini』が雑誌として創刊。定期刊行物になる

 

出典=『Yogini』Vol.69 /『最新版 ヨヨガが丸ごとわかる本』/『はじめてのヨガ』

写真=Govinda Kai

監修=谷戸康洋

やとやすひろ。生まれ育った標高1100mの八ヶ岳南麓の環境を生かし、森林療法、自然療法などにも積極的にヨガを取り入れる。2012年に自身のスタジオ「fika」を、山梨県昭和町 に設立。サンスクリット語、 ヴェーダーンタをSwami Cetanananda 氏より学ぶ。