新連載スタート「お手当は台所から」Vol.1 文・寺口朝子(発酵食養家)
「お手当って、本当に効くんですか?」
そんな質問をいただくたびに、私は一人の母親として歩んできた時間を思い出します。
私がお手当を学び始めたのは、自然療法に興味があったからでも、仕事にしたかったからでもありません。
“この子を守りたい”その一心でした。
息子が小学校へ入学する直前のことです。
ランドセルを背負い、新しい毎日に胸を躍らせていた矢先、医師から思いもよらない言葉を告げられました。
「よくここまで持ちましたね」
息子には重い心臓病がありました。
あれから九年。病院で経過を見守っていただきながら、私が日々大切にしてきたのは、食養とお手当のある暮らしです。
アトピーや喘息もあった息子は、少し咳をしただけでも“体からのサイン”。
そんな小さな変化に耳を澄ませながら、その都度、台所でできるお手当てを重ねてきました。

このエッセイでは、そんな暮らしの知恵を皆さんと分かち合えたらと思っています。
今、スマートフォンやゲーム、そしてAIの普及によって、私たちはかつてないほど目を使う時代を生きています。
そんな現代人にぜひ知っていただきたいお手当が「番茶シップ」です。
熱を持って充血した目は、ゆるみすぎて毛細血管が広がった状態と捉えます。この「広がる・ゆるむ」という性質を陰性と考えます。
そこへ番茶や塩が持つ「陽性」の締める力を施すことで、広がった状態を心地よく引き締め、
偏ったバランスを本来の真ん中へ戻していく。それがお手当ての基本的な考え方です。
食べものを栄養素や成分で捉えるのではなく、食べ物が持つ陰=ゆるめる力と陽=締める力を基準に判断し、
そのバランスを戻していくのがお手当ての基本です。
中庸でバランスが取れているものは、心から「美味しい」と思ったり、「気持ち良い」と感じるものです。
温かな番茶シップを目に当てると、「ふぅ……」と全身の力まで抜けていくような心地よさがあります。
以前、数年間お手当てを伝えていたフリースクールでも、子どもたちが真っ先に「またやりたい!」と言うのが
決まって番茶シップでした。子どもは五感に正直です。気持ちがいいものを、ちゃんと知っています。
先日も、大切な講演を控えた友人が朝から結膜炎で目を腫らしてしまいました。
三年番茶がなかったので、ほうじ茶で代用した番茶シップを試したところ、
本人が「ずいぶん楽になった」と話し、そのまま安心して講演へ向かうことができました。
私は、お手当ての一番の魅力は自分の体調を整えられることはもちろん
「暮らしの中で、大切な人を支えられること」だと思っています。

頭痛、お腹の不調、発熱……。昔の人は、梅干しや番茶、りんご、野草など、
身近な自然の恵みを生かしながら体をいたわってきました。
病院や薬が必要な場面は、もちろんあります。
でも、その前に台所でできることを知っているだけで、「大丈夫」と思える安心感が生まれます。
子どもが咳き込めば背中をさすり、転べば傷にそっと手を当てる。
その手には、知識だけではない、安心や愛情が宿っています。
“あなたのことを大切に思っているよ”
そんな想いが手から波紋のように広がり、やさしさが巡る世界を、私は夢見ています。
お手当てとは、自然の力を借りながら、人が本来持っている“治ろうとする力”を信じること。
このエッセイを通して、皆さんの台所が、自分や大切な人を守る小さな診療所のような場所になれたら、
こんなにうれしいことはありません。
今日のお手当
― 番茶シップ ―
目の疲れや充血、結膜炎など目のトラブルを感じたとき、私がよく行うお手当です。

〈用意するもの〉
三年番茶 200ml
自然塩 2g
ガーゼ(または手ぬぐい)
〈やり方〉
熱い三年番茶200mlに自然塩2gを溶かします。
ガーゼを浸して軽く絞り、やけどをしない程度の心地よい温度になったら、
まぶたの上にのせます。
シップが冷めてきたら温かいものに取り替えながら、
5〜10分ほど、ゆったりと目を休ませてみてください。
※熱すぎるとやけどの恐れがあります。必ず手で温度を確かめてから行ってください。
※塩番茶液は他の方と共用せず、一人ずつ新しいものをご使用ください。
【ひと言アドバイス】
喉のイガイガや痛み、違和感が気になるときに、この塩番茶でうがいをするのも、昔から受け継がれてきた暮らしの知恵の一つです。
※目のお手当に使用した塩番茶液は、うがいや飲用には使用せず、新しく用意したものをお使いください。

[NEWS]
寺口朝子さんのお手当を対面で学べるワークショップが東京で開催!
『自然の力を活かしたセルフケア−日本古来のお手当て術−』
7月31日(金)、8月1日(土) 講座詳細はこちらから。
https://lotus8.co.jp/workshop/oteate/
文=寺口朝子/Asako Teraguchi
【Profile】
発酵食養家。大阪生まれ 福岡県糸島在住。2013年、マクロビオティックのプライベートシェフとして世界的に著名である西邨マユミ氏と出会い、自然に寄り添った食べものを摂るようになる。次男の心臓病発覚で本格的な食養を実践。東日本大震災後、東京から福岡へ家族で移住。自然栽培のお米を作り始め、味噌を仕込みながら、独学で麹作りを習得。
現在は麹文化研究家・南智征なかじ氏に師事。
2024年から潜在意識・脳科学・量子力学など心の学びを深めマインドコーチとしても活動。これらすべての学びを注ぎ込んだ年間プログラム「健やかな暮らし方」、「麹と仕込みを技に」にて受講生さん達と日々、暮らしの学びと心の繋がりを深め、発酵文化、そして食養とお手当てを広めている。
Instagram:
https://www.instagram.com/awauta_brownrice/
Homepage:
http://awauta.jp/