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ヤマ、ニヤマの基本を学ぼう!

最初はポーズから入ったという人も、ヨガを深めてくれると気になってくるヨガ哲学。ヨガ哲学の基礎と言える八支足のヤマ、ニヤマ。

実は八支足の中で最も難しく、ヤマ、ニヤマの実践ほどヨガな人になるために効果的な方法はないかも⁉︎ ここではヤマ、ニヤマの基本的な知識を整理していく。

 

ヤマは他に対して心がけるべきこと

 

YAMA[ヤマ]:自分がつながる相手に対して、どういうことをしてはいけないか。

  1.  アヒンサー:不殺生・非暴力

  2. サッティヤ:嘘をつかない・真実を言う

  3. アステーヤ:盗まない・不盗

  4. ブランハチャルヤ:禁欲

  5. アパリグラハ:むさぼらない

暴力を振るわない、嘘をつかない、盗まない…子どものころ、親に言われたことはないだろうか。どれも、常識と思われていることばかりだ。それをヤマとして改めて記しているのは、もともと人間が持っている性質に、これらのネガティブなものがあるからと言える。

その証拠に、歴史が始まってからずっと、このネガティブな問題が原因で起こるトラブルが絶えることはない。それをゼロにするのは難しいが、最低限、これはやめないと苦しみがつきまとって、ハッピーになれませんよ、というのがヤマ。

ヨガは「つながる」という意味だが、つながるには相手がいる。そのつながる相手に対して、ヤマを使う。嘘をついてつながってはいけない、傷つけようとしてつながってはいけない。

五つすべてが重要だが、一番と言われたら、最初に登場するアヒンサー。これがすべてのヤマの土台になる。少しわかりにくいのがブランハチャルヤだが、これは、パートナーを大切にしようという意味もある。大事なのは、やってはいけない、その具体的な中身を自分で決めること。

アヒンサーについても、自分にとって「暴力」とは何かを考えたい。どこで線を引くのか。それは人に教えられるものではないし、自分の頭で考えて決める。ヤマは簡単なようで、奥が深いのだ。

ニヤマは自分自身に働きかけること

 

NIYAMA[ニヤマ]:つながりの出発点である自分をどうしたらいいのか。

  1. シャウチャ:清浄にする

  2. サントーシャ:満足をする 

  3. タパス:心と体を洗練する 

  4. スワディヤーヤ:読誦 

  5. イーシュワラプラニダーナ:身をゆだねる・祈りの心

ニヤマは、つながりの出発点である自分を、心地いい、ハッピーな状態にするための五つのキーワード。心地いい自分であれば、つながった相手も心地がよく、心地いいつながりと言えるだろう。

簡単に言うと心身をきれいにし、満たされていることを知り、自分が向上するために鍛錬を怠りなく、学ぶ姿勢を忘れず、目の前で起きていることを受け入れ、敬意を払う。

タパスは苦行と訳されることが多いが、直訳すると、何かを燃やすという意味。自分の中の不純物を燃やして、ピカピカの自分にバージョンアップしましょうよ、ということだ。だから快適なのであれば、女性のおしゃれもタパスだ。

また最後のイーシュワラプラニダーナにはいろいろな意味があり、広くて深い言葉。すべてのものを敬愛し、それに基づいた行動を取るという考えがベースだ。例えば、嫌な上司にも、尊敬し大好きだった学生時代の先輩に接するようにしましょう、ということ。また、目の前のことを受け入れるという意味もある。

嫌なことであっても、苦しいと思っても、いったん受け入れてみよう。それでもし嫌だったら、それに沿ったアクションを起こせばいいし、意外にいいものだったら、育てればいい。起こっていることに、いちいち右往左往しないこと。ニヤマを実行するには、理性的であることが必要だ。

ヤマ・ニヤマは八支足の土台

 

八支足が書かれている『ヨーガスートラ』は数あるヨガの本の中で、一番重要な本。『ヨーガスートラ』には、人間の幸せとは何か、ヨガとは何か、どうしたら幸せになれるのか、その幸せにヨガはどうかかわるのか、という哲学が網羅されている。

その中の具体的な行動を示すものとして、八支足がある。字面からは規則のようなものを想像しがちだが、元の言葉では八つのパーツ、柱のようなものであって、決して規則ではない。

その最初の二つがヤマとニヤマ。これがすべての土台になっている。人生は日常の積み重ね。その日常生活の中で心がけること、肉体的にやること。これなしには、ヨガのゴールに決してたどり着くことはできない。

どんなにすごいポーズができても、たくさんの呼吸法を覚えても、ヤマとニヤマができていなくては、台なし。逆にヨガをしていなくても、ヤマ・ニヤマができていればゴールに到達することができるのだ。

ヤマとニヤマは、ヨガのプラクティスの中でできることもあるが、基本は日常生活の中、家族や友人、会社などで意識して、少しずつ実行していくことが大切だ。

ヤマのところでも触れたが、一つひとつの項目を、自分の頭で考えて決めていく。例えばアヒンサー。ヴィーガンを行って調子が悪ければ、ミルクはよしとする。肉は大好きだから食べるが毛皮は着ないなど。

自分の基準を見つけること。そしてそれは、時とともに変わっていくだろう。それに対応するために、観察力も身につける必要がある。短い単語の羅列のようなヤマ・ニヤマだが、とても深い哲学になっているのだ。

Profile
森田尚子
もりたなおこ。クリシュナマチャリアのヨガ正式指導者。ヴェーティックチャンティング正式指導者。YOGAVEDA協会代表。

 

文=Yogini編集部