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背骨 骨格だけじゃない三つの役割を持つヨガの重要な要素

背骨が自然な字を描けていると血液やエネルギーはスムーズに流れ心身ともにイキイキと整う。背骨の三つの役割を見ていこう。

 

【生命を支える背骨の働きーー血液、神経、エネルギーの通り道】

 

ヨガでは、背骨を「骨格」と「管」という見方をする。体の中心を通り、全身を支える大黒柱としての骨格。あらゆる体の動きは背骨を中心に起き、24個の椎骨、仙骨、尾骨(合計33個)からなる関節が、それを可能とする。

ヨガのポーズは背骨にダイレクトにアプローチし、背骨の位置を整え若々しく保ってくれるものが多い。背骨には「管」としての働きもある。背骨まわりには血液、リンパなどの大きな流れがあり、背骨の中には脳からつながる神経の束が保護されながら走る。

背骨を動かすことはそれらの流れを潤滑にし、心身を健康へと導くことに直結する。そして最も特徴的なのが、背骨は「目に見えない大事なもの」も運ぶという考え方だ。

背骨は、生命エネルギーと言われるプラーナ(気)が通る管(ナーディー)であり、よく耳にする「チャクラ」も主要なものは背骨のまわりに位置している。

 

【背骨の三つの役割】

 

01きれいな姿勢を作る背骨

 

■正しい姿勢の背骨は700㎏の荷重に耐えられる

骨や筋肉の配列をアライメントと言い、ヨガではアライメントを正しく取り、体に余計な負担をかけず動くことを目指す。背骨の正しいアライメントは、自然なS字カーブ。このカーブが上体の重さを支え、直立二足歩行で大きく発達した脳を、サスペンションの働きで衝撃から守る。

頭部の重さだけでも4㎏はあると言われているが、骨の強さがピークになる20代では、背骨はなんと700㎏の荷重に耐えられる。現代の生活環境では、背骨の歪みによる不調が急増中。

■背骨を自然に伸ばすには骨盤を立てるべし

背骨を自然に伸ばすには、土台となる骨盤を立てるといい。背骨は骨盤に連動して動くので、骨盤を立て腰椎との角度が0度の時、S字のクッションが働く最適な場所に整う。

背骨と骨盤をつないで、安定させるのが体幹と言われるインナーマッスル。この深層筋群は、呼吸で使う筋肉ともかぶっているため、深い呼吸で鍛えられ、背骨はさらに安定する。また、骨盤内には生殖器など重要な臓器があるので、骨盤を立てた圧迫のない状態は健康面でも大切だ。

■背骨の五つの動きと太陽礼拝B

背骨における五つの動き──前屈、後屈、側屈、回旋、逆転で、背骨をダイナミックに動かしていくメソッドがヨガ。中でも太陽礼拝Bは、ウトゥカターサナとヴィラバドラーサナIが加わり、4種類の動きを網羅するため特にオススメだ。

腰椎や頚椎に負担をかけず、無理なく次のポーズに入れるようにデザインされている。また、背骨を支えて動きを補強するインナーマッスルにもしっかりとアプローチするため、体幹部がさらに安定し、姿勢改善が期待できる。

 

02神経系を保護し自律神経を調整する

 

■神経を保護する背骨

心身のコントロールセンターである脳。その脳から、中枢神経と呼ばれる神経の束が、仙骨のあたりまで走っている。この大切な神経を保護するのが背骨。中枢神経は背骨のトンネルを通りながら、脊髄と呼ばれる末梢神経に枝分かれし、全身の臓器や器官へ指令を伝えている。

この管である背骨が歪むと神経は圧迫され、痛みやシビレを生じさせるだけでなく、臓器の働きや精神にまで悪影響を及ぼしてしまう。強くて若々しい背骨を保つためにヨガでメンテナンスを。

■背骨から自律神経を整える

神経は働きによって二分される。そのうち、自分の意思で制御できないタイプを自律神経と言い、例えば「血圧よ、下がれ」と指令を出して制御できることはできない。自律神経は、戦闘モードの交感神経と、リラックスモードの副交感神経がバランスを取りながら、健康を保つ仕組みになっている。

暴走した自律神経を、意識的に整えられる唯一の方法が「深い呼吸」。呼吸の通り道である背骨をメンテナンスすることで、自律神経の調和に働きかける。

■椎骨と症状の関係

それぞれの椎骨から枝分かれした神経は、各臓器の働きをコントロールする。各椎骨の状態の悪化が原因となる可能性のある症状をまとめた。

■背骨が影響を与える内臓の働き

背骨、自律神経、臓器は密接にかかわり、お互い影響を与え合う。背骨が整うと内臓は本来の場所に戻り、圧迫などから開放され、きちんと機能が働くようになる。

また、臓器をコントロールする自律神経の通り道も背骨にある。お互いバランスを取り合いながら働く交感神経と副交感神経だが、どちらかが優位になると、表のような体や精神の反応が現れる。

03生命エネルギープラーナの通り道

 

■背骨は生命エネルギープラーナの通り道

背骨の周りには血液や神経など目に見えるものだけでなく、目に見えないものも流れている。ヨガでは、背骨は生命エネルギーを体中に循環させるための、大事な管。生命エネルギーをプラーナと言い、日本語では気と訳されることもある。

背骨に歪みや縮みが生じ、プラーナの流れる管が圧迫されると体のエネルギーの流れが滞り、臓器や体に不調が起こる。この通り道をヨガの言葉ではナーディーと言い、背骨にそって3本の主要なナーディーが通っているとされる。

■背骨に沿って走る3本のナーディ

体には7万2千本のナーディーが巡っているとされているが、最も重要な背骨に沿っているスシュムナーナーディーは、「気の体」における背骨に当たるだろう。そしてスシュムナーの周りをらせん状に交わりながら2本のナーディー、イダー(陰)とピンガラー(陽)が取り巻いている。

自然法則に則さない欲望、感情、思考でも詰まりやすくなるナーディーを浄化する方法が、ヨガのポーズや呼吸法。

■プラーナ力を高めるカギは背骨にあり

プラーナは生命を維持するすべてのエネルギー。チャクラのエネルギー源もこのプラーナ。プラーナ力がつくと、体の健康だけではなく、心の面でツラいことを喜びに変えたりする生命力が養われる。

プラーナ力を高めるカギは、呼吸と背骨。背骨が歪んでいるとプラーナの動きが滞ってしまい、働きが弱まってしまう。こうしたプラーナの乱れは、イダー(陰)とピンガラー(陽)のバランスを崩し、チャクラの働きも滞る結果に。背骨周辺の詰まりを取り、呼吸を全身に巡らせるヨガの実践でプラーナ力を高めていこう。

■背骨と浄化の意外な関係

ヨガの目的は瞑想でサマーディ(三昧)に達し、内なる神と一体化することにある。いわゆる“悟り”の境地へたどり着くこと。瞑想は、背骨が浄化することでより深まっていく。スシュムナーは、自然法則を超えた感情や体の歪みなどで詰まりやすくなり、トラウマは脊柱に残ると考えられている。

ヨガで言う“浄化”は、そういった老廃物を取り除き、本来あるべき状態に還ることを目指す。プラーナを巡らせることで背骨は浄化する。

■背骨にそって存在するチャクラ

背骨を通るスシュムナー、イダー、ピンガラーが交わるところには、七つのチャクラが存在し、エネルギーのコントロールセンターとして心身を調整する。七つのチャクラの働きに偏りがなく、プラーナが円滑に全身を巡っている状態が好ましく、各チャクラの状態がダイレクトに各神経叢や臓器に影響を与える。

例えば、背骨を後屈するポーズにより心臓周辺にある第4チャクラが整うと、気持ちが明るくなったり、愛の力が高まる。

イラスト=宇野将司(asterisk-agency)/macco

出典:「Yogini」Vol.76