検索

アーサナ 「安定して快適」な状態を目指し、さまざまな姿勢を行う

アーサナ(ポーズ)を取ることは瞑想状態に入りやすくなるための準備。気持ちよくアーサナを行うために知っておきたいことがある。

【アーサナはそもそも坐法だった】

『ヨーガ・スートラ』では、八支足の3番目 に出てくるアーサナ。八つのステップの中、 役割は集中しやすい姿勢を保つための体作りだ。そしてアーサナとは坐法。どのように座れば瞑想状態に入りやすく、保っていられるのか…。座った姿勢でプラーナを巡らせる修練を行い、自分と向き合っていくのがヨガの王道とされたのだ。

八支足では、最初にヤマ、ニヤマで他人や自分とのつき合い方を見直し、瞑想する時に気に なりそうなことをなるべく排除。その後、瞑想への準備として体を整える。坐法はどんな状態で座るかだけ解説。

【ラージャ・ヨガへの段階としてハタ・ヨガが確立】

ハタ・ヨガは、心を心でコントロールするのが難しいということから起こってきた、体を動かして心を落ち着かせる方法だ。体を動かすアーサナ様のインドの土着的な修行は、瞑想系ヨガの流れとは別にあったと思われるが、体系化されたのは10 世紀ごろと言われる。教典となる『ハタ・ヨーガ・プラディピカー』は16-17世紀ごろ成立。

【『ハタ・ヨーガ・プラディピカー』とスヴァートーマーラーマ】

『ハタ・ヨーガ・プラディピカー』は、ハタ・ヨガの根本教典とされ、16-17 世紀のヨガ行者、スヴァートマーラーマによって書かれた。ハタヨガの解説や行法が体系的にまとめられて、冒頭にハタ・ヨガはラージャ・ヨガの準備段階であると掲げられている。

【アーサナの数は数万!?】

アーサナは、現代では数万種あると言われるが、『ハタ・ヨーガ・プラディピカー』では18 種が紹介されている。

【アーサナのゴールは「安定して快適な姿勢」】

4-5世紀ごろに編纂されたとされる『ヨーガ・スートラ』の八支足には、アーサナをどのように取るべきかが書かれている。もちろん現代のように細かいアライメントがあるわけではなく、その目指すところはごくシンプルに、「アーサナは安定して快適な姿勢である」。人それぞれ、安定感と快適な状態を探っていくように伝えられているのだ。

Sthira-sukham asanan

スティラ スッカン アーサナン

アーサナとは安定していて快適な姿勢のことである

【太陽礼拝から始まる近代のハタ・ヨガ】

1900年代の初めごろ、インドでは青少年の体力がガクンと落ちていた。そこで1920年代に、インドの独立運動の高まりにつれてインド式体操を考案。その一つがT.クリシュナマーチャーリャ氏による太陽礼拝だった。その後、クリシュナマーチャーリャ氏の弟子だったシリー.K.パッタビジョイス氏やB.K.Sアイアンガー氏が自分の流派を立ち上げ、世界的な人気を博したことから、ハタ・ヨガがグローバルになった。

□T.クリシュナマーチャーリャ

1888〜1989。101歳で亡くなった「現代ヨガの父」。インドでヨガを広めることに尽力し、多くの弟子を育てた。現在は「クリシュナマーチャーリャの教え」として残っている。

□シリー.K.パッタビジョイス

1915〜2009。アシュタンガ・ヴィンヤサ・システムを構成し、1940代にマイソールで指導開始。’90年代半ばにマドンナ、スティングなどのセレブが学んでいることで注目され、アメリカ全土に広まる。

□B.K.S.アイアンガー

1918〜2014。解剖学的に心身に無理のないアーサナを西洋に広めた。呼吸に対しての造詣も深く、著書は世界的に評価されている。2004年、アメリカの『Time』誌で「世界で最も 影響力のあった100人」の一人に。

【プラーナを巡らせることがアーサナの目的】

アーサナは全身の詰まりを取り、プラーナ(生命エネルギー)を巡らせるための方法。そのため、アーサナを行う際は、それを意識した動き方をしたい。呼吸に動きを合わせるヴィンヤ サスタイルは、慣れてくると次第に体への意識や思いから離れ、無心で「ただ動く」ことがしやすくなる。全身がプラーナで動かされている状態だ。アーサナをそんな風に取れる時は、瞑想状態になっているはずだ。

 

写真=樋口勇一郎