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“宇宙との一体感”を取り戻すために意識したいこと

ヨガには、“この世界に存在するあらゆるものは、生まれた場所が同じ”という考え方がある。そう考えると、木々や星や動物達など宇宙すべてのものと一体感を感じるのはナチュラルなことだ。

 

この感覚を感じにくくなってしまった現代社会を生きる私達は、瞑想を通じて再び体験することができる。今回は、宇宙、自然のリズムの調和の一部であるという感覚を取り戻し、心地よく生きるためにできることを考えていこう。

 

瞑想に入るための生活のすすめ

昔の人々は自然の微細な変化を読み解きながら、暮らしを営んできた。そこには自然界とともに生きようとする謙虚な姿勢と、あらゆるものはどこかでつながっているという一体感があったのではないだろうか。

 

ヨガには瞑想法がある。現代に生きて、あらゆるものとのつながりを忘れがちな私達も、瞑想の実践を積み重ねることによって、宇宙との一体感を再び体験することができるかもしれない。

 

そもそもヨガの八支則は、瞑想までのステップをシステム化したメソッド。8番目に位置するサマーディの段階まで来ると瞑想が深まり、あらゆるものとの一体感、ワンネスを体験できると言う。

 

では、瞑想で宇宙との一体感を感じるために、常日ごろ、どのような体づくりを心がけたらいいのか。

 

「食べ物については、バランスのいい食事を心がけて偏食をしないことです。宇宙の叡智を理解していたイエス、釈迦、孔子、ソクラテスなどは菜食主義ではありませんでしたし、釈迦以外は飲酒もしていました。瞑想を深めるために、自己満足や虚栄からの表面的なストイックさは無縁です」と瞑想に詳しい小山一夫先生は言う。

 

何ごともこだわりすぎると、かえって精神状態を偏らせ、瞑想を妨げる原因になることがある。心については日本の思想である、一霊四魂(いちれんしこん)に習うといい。日本では昔から、心というのは天とつながる一霊「直霊(なおひ)」(アートマンに相当)と

四つの魂(プルシャの構成要素)から成り立つと考えてきた。

 

生活態度は、一霊四魂のうちの四魂の機能、“勇・智・親・愛”をほどよく整えるように過ごすことが大切。“勇”は前に進む推進力、かつ耐え忍ぶ力。“親”は親しみや調和、平和を担う力。“愛”は人を愛して育てる思いやりや愛情の力。“智”は観察力や理解力など真理を求めて探究する力のこと。

 

瞑想をスムーズに進めるためには、体や心にとらわれないよう、調和の取れた精神状態を保つことが大切。その基盤となるのが一霊四魂というわけだ。

 

一体感を体験するまで

 

瞑想に入る過程において、体はどのように変化していくのだろうか。「瞑想に入る時、感覚器官が特定の対象と結びつかないようにコントロールします。つまり、特定の何かに意識が集中しないように感覚器官を制御するということです」。

 

「すると生きていること、つまり体熱や呼吸、細胞の息づきなど、生命の躍動をあるがままに全身で実感します。自分と外側の境界線があいまいになり、大気に融け込んでいくことができます」。

 

それを曹洞宗の開祖・道元は“皮膚脱落”と呼び、“皮膚=体の内外の境”がなくなる境地のことを指した。プラティヤーハーラ(五感の制御)から段階的に肉体感覚が消失していくと、最終的にヨガの経典『ヨーガスートラ』が記している、心の作用の止滅を達成すると小山先生は説明する。

 

さらに瞑想を深めるとダーラナ(集中)とディヤーナ(瞑想)によって、肉体感覚が希薄になっていきます。そして自分の真我(アートマン)が観えた後、肉体感覚が完全に消失し、真我だけになる。その状態がサマーディの境地だ。

 

『カタウパニシャッド』では、真我と神我(宇宙の根本原理・ブラフマン)が一つになることがサマーディと定義している。つまり、宇宙との一体感を体験するためには、瞑想の過程において、肉体感覚が消失していなくてはならず、肉体や感覚器官への意識を手放さなくてはならない。

 

そして、いつでも手放せる心理状態を準備しておくには、先に述べたような調和の取れた心理状態が必要になってくるのだ。瞑想の奥深い体験は、自分の存在が大自然・宇宙の一部であることをリアルに実感させてくれる。

 

そして自分の本質である真我が、時間や空間の束縛を超えた存在であることを教えてくれる。瞑想を通して大自然・宇宙とつながるための第一歩が、日々の生活の中で自分の体、心と向き合って調和することと言えるのだろう。

 

 

教えてくれた人=小山一夫先生

こやまかずお。火の呼吸クンダリーニJP代表。貿易商として世界を巡りながらクンダリーニヨガ、東洋哲学などを40年以上研究。著書多数

 

文=Yogini編集部