睡眠不足はダイエットの敵

健康的な体を保つためには、十分な睡眠を確保することが大事だとわかっていても、ついつい忙しいと削ってしまいがちな睡眠時間。

私達は、眠らないと多くの生体リズムが破綻することが最近わかってきた。その中で、今回はダイエットに関係がある睡眠の役割、二つを今回は紹介！

睡眠が果たす役割

ダイエットに関係した睡眠の役割一つ目は、成長ホルモン。成長ホルモンは、骨や筋肉の成長促進作用のほかに、代謝や脂肪分解を促進する作用がある。

成長期の子どもだけではなく、大人になっても眠っている間には成長ホルモンが出る。睡眠不足になると、成長ホルモンの分泌が低下することで、子どもでは発育障害が起こり、大人では体脂肪が燃焼されにくくなってしまうのだ。

二つ目は自律神経の安定。睡眠時には、副交感神経が優位な状態になっているが、これが重要なポイント。なぜならダイエットには、自律神経が深くかかわっているからだ。

自律神経とは、自分の意思とは関係なく、内臓や血管など体内の機能をコントロールしている神経。活動モードにするために、体のあらゆるところを調整する交感神経、休息モードに調整する副交感神経がある。

仕事に家事に趣味に、何かと忙しい現代の生活では、食事と排泄以外は、起きてから寝るまでほとんどが活動モード、つまり交感神経が優位の状態。そこできちんと睡眠を取り、副交感神経が優位な状態を作り出すことで、両方のバランスが取れ、心身がしっかり機能することができる。

この自律神経は食欲のコントロールにも関係する。「お腹空いた、何か食べたい」という摂食中枢には、覚醒して摂食行動を起こさせるオレキシンという脳内ホルモンがかかわっていて、交感神経を興奮させる。一方食事中は副交感神経が優位となり、食物の消化・吸収を行う。

食事を摂ると、脂肪細胞からレプチンという物質が出て、「もうお腹がいっぱい」という満腹感が起きる。逆にお腹が空くと、胃からグレリンという物質が出て空腹感が起こり、摂食行動と成長ホルモンを分泌させる。

それぞれの自律神経がバランスよく機能していれば、このシステムが正常に働き、余計なものを欲っしなくなり、食べすぎることはない。しかし自律神経のバランスが崩れると、満腹中枢が正常に機能しないため、結果的に食べすぎにつながる。

このように、成長ホルモンと自律神経は、摂食行動、ひいては体脂肪とも深く関係している。実際、自律神経の機能が低い女性達と、高い女性達のBMI値と体脂肪率を調べたところ、低い女性達のほうがBMI値も体脂肪率も高かった（女性心理医学201５）。

このように、効果的なダイエットには、自律神経がしっかり働くことが重要。良質な睡眠で、活性化しにくい副交感神経の機能を高め、二つの自律神経を活性化したい。

睡眠不足は、百害あって一利なし

睡眠不足になると、交感神経が優位な状態が続き、オレキシンが出すぎて摂食行動が止まらなくなる。本来、交感神経と副交感神経は交互にしっかり機能するのが理想的。睡眠不足は、体にとっては不自然な状態と言え、ダイエットにはNo Good。

自律神経のバランスが悪くなることで、食欲にムラが出たり、むくんだり、代謝が下がるだけでなく、消化不良になったり、便秘になるなど、胃腸にも影響が出る。インシュリンの抵抗性も高まるため、この状態が続くと血糖値が下がりにくくなり、太ってしまうリスクが増える。

良質な睡眠のためのヨガ

良質な睡眠のためには、眠れなくなる原因である交感神経をなだめる、心身ともにリラックスした状態に持っていくことが必要。それには、ただソファにもたれてダラダラするなど、中途半端にリラックスするよりも効果的な方法がある。

それがヨガだ。ただし、やみくもに好きなポーズを行うのではなく、順番と内容が重要になる。ウォームアップをして体を慣らし、大きな筋肉を使ったポーズを取って、いったん交感神経をグーッと上げる。

そして徐々にクールダウンをしていき、最後はシャヴァーサナでリラックスするという流れがオススメ。交感神経を上げることで、その後のクールダウン、シャヴァーサナでは副交感神経が優位になる。意図的に落差を作るというわけだ。

ポーズは、最初のほうで交感神経を刺激する後屈系を行い、それから副交感神経を優位にする前屈系を行おう。シャヴァーサナの時間も、いつもより長めに取ってみるのもいいだろう。

これを寝る前に行えば、昼の活動の疲れも癒え、気分的にもリセットされる。時間がない場合はウォームアップとクールダウンだけでもいいし、それも無理な時には、寝たままできるヨガニドラー（眠りと覚醒の間で、リラクゼーションを深めていく方法。ガイドしてくれるアプリやCDが出ている）だけでもいい。ヨガを続けていると自律神経が安定してくるので、睡眠リズムが整ってくるので、無理なく継続的に続けよう。

教えてくれた人＝石井正則
いしいまさのり。医学博士。JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。ヨギーインスティテュート認定インストラクター・専門講師。近著に『やってはいけないヨガ』（青春出版社）など

文＝Yogini編集部